『Safe Cities Index
2017』では、2015年版の4つのセキュリティ・カテゴリー(サイバーセキュリティ、医療・健康環境の安全性、インフラの安全性、個人の安全性)が引き続き用いられているが、今回は新たに6つの指標が設けられた。また2015年版から新たに10都市がランキングに加わり、調査対象都市は合計60に増えている。
本調査の主要な論点は以下の通り:
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2015年版の調査と同様、総合ランキング首位は東京
東京の順位は“医療・健康環境の安全性”カテゴリーで前回から7つ上昇したが、最大の強みは“サイバーセキュリティ”分野だ。一方、“インフラの安全性”ではトップ10から脱落し12位となった。
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多くの都市では安全性が低下傾向に
2つの都市(マドリッド[+13]とソウル[+6])を除いた多くの都市は、前回よりも順位を落としている。例えばニューヨークは11、リマは13、ヨハネスブルグは9、ホーチミンは10、ジャカルタは13順位を落とした。。
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ランキング上位を占めたのはアジア・ヨーロッパの都市
総合ランキングのトップ10には、東アジア4都市(東京・シンガポール・大阪・香港)とヨーロッパ3都市(アムステルダム・ストックホルム・チューリッヒ)がランクインしている。
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ランキング下位はアジア・中東・アフリカの都市で占められている
総合ランキングのワースト3位に入ったのは、ダッカ・ヤンゴン・カラチだ。最下位10都市には、東南アジアの3都市(マニラ・ホーチミン・ジャカルタ)、南アジアの2都市(ダッカ・カラチ)、中東・アフリカの2都市(カイロ・テヘラン)が入っている。
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都市の安全性と所得水準には依然として密接な関係がある。また高所得都市のランキングは上昇傾向
総合ランキングの上位半分は、高所得国の都市によってほぼ独占されている(下位半分は新興国の都市が占める)。また、高所得国14都市のうち10都市は、2015年版の調査から順位を上げている。
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都市の安全性を左右する要因は所得レベルだけではない
総合ランキングでトップ10に入った都市のほとんどは、高所得あるいは中所得層に属する。しかし、高所得層に分類される中東の2都市(ジッダ・リヤド)は、ランキングの40位圏内に入っていない。
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ランキングに影響を及ぼした米国におけるインフラの質低下
“インフラの安全性”カテゴリーでトップ10に入った米国の都市はなく、トップ20を見てもわずか1都市(サンフランシスコ)だ。同分野でトップ10に選ばれたのは、いずれもヨーロッパの都市(マドリッド・バルセロナ・ストックホルム・アムステルダム・チューリッヒ)と、アジア太平洋の都市だった(シンガポール・ウェリントン・香港・メルボルン・シドニー)。
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一方、米国の都市はサイバーセキュリティの分野で高スコアを獲得
サイバーセキュリティ分野のトップ10のうち4都市は北米から選ばれている(シカゴ・サンフランシスコ・ニューヨーク・ダラス)。
一方、新興国都市で最高ランクを獲得したのは、今回から対象リストに加わった都市クアラルンプールだ。総合ランキングでは北京(32位)や上海(34位)を上回る31位に選ばれている。最も評価が高かったカテゴリーは“個人の安全性”(24位)で、薬物使用やジェンダー・セーフティ、テロ攻撃の脅威といった項目で良好なスコアを獲得した。
一方、新興国都市で最高ランクを獲得したのは、今回から対象リストに加わった都市クアラルンプールだ。総合ランキングでは北京(32位)や上海(34位)を上回る31位に選ばれている。最も評価が高かったカテゴリーは“個人の安全性”(24位)で、薬物使用やジェンダー・セーフティ、テロ攻撃の脅威といった項目で良好なスコアを獲得した。
今回調査対象となった北米7都市は、もれなくランキング上位半分に入ったが、重要分野で他の先進国都市に遅れをとっている。例えば“医療・健康環境の安全性”のカテゴリーでは、ニューヨークが31位、ダラスもそれをわずかに上回る29位にとどまった。後者は“インフラの安全性”で下位半分にランクされており、シカゴ(27位)とワシントンDC(28位)の成績も振るわなかった。公共インフラの老朽化は、長い間米国で議論の的となっている問題だ。今回の結果は、こうした議論が具体的アクションに結びついていない現状を浮き彫りにしている。
『Safe Cities
Index』は原則として、絶対的安全性よりも相対的安全性を評価対象としている。しかしその点を考慮しても、都市の総合的安全性は2015年以来大きく改善していないようだ。先進国(特にヨーロッパ)の都市では、テロ攻撃が“個人の安全性”に影響を与えた。また新興国の都市では、急速な人口拡大とともにインフラや医療サービス、警察への負担が増しており、機能麻痺に陥るケースも見られる。
もちろん改善の兆しが全くないわけではない。少なくとも先進国では、サイバーセキュリティ向上のためリソースを拡大する都市が増えている。例えばソウルは、PCのウィルス感染台数や個人情報の窃盗件数を減らし、同カテゴリーで順位を29も上げた。だが、安全性のレベルは都市ごとに大きな差が見られるのが実情だ。多くの場合、財源・人・政治など様々なリソースの状況が取り組みレベルを左右している。同様に課題となっているのは、関係者の理解不足だ。ただ後者の場合、取り組みの重要性に対する理解を深め、問題を特定し、他都市の対応を学ぶことで、安全性の向上を図ることができるだろう。『Safe
Cities Index』は、まさにこうした目的のために作成されたものだ。